東京地方裁判所 昭和38年(ワ)8748号・昭37年(ワ)9693号 判決
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〔判決理由〕被告らは、土地明渡の本訴請求は所有権の乱用であると主張する。原告が本件土地を買取るにいたつた経過は既に判示したとおりである。債務者がその建物を債権者に代物弁済した場合に、その後その建物の敷地を取得し債権者に対し借地権のないことを理由に建物を収去し敷地の明渡を求めることは、債権者において建物の使用により債務の弁済としての利益を享受するに相当の期間をおいた後でなければ信義則に反するものと認めざるを得ない。本件において原告は債務者ではないが、さきに判示した事情の下に、債務者次彦および本件土地の賃借人嘉国と相図つて右次彦に居住させるため本件土地を買い取つた。このような場合にもさきに述べた債務者の場合と同様の信義則が守られるべきである。原告は、次彦が本件建物を明渡してから六日後であり、売買契約締結から三日後である昭和三七年九月二〇日に本訴を提起した。そして口頭弁論終結の昭和四〇年一二月一七日現在において債権者被告小川が本件建物の使用により代物弁済としての利益を享受するに相当の期間が経つたものとは認められない。そうすれば、原告の本訴請求は信義則に反し被告小川の利益を著しく害するもので、真実の所有権の行使と認めることはできず、権利の乱用である。(上野 宏)